極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
三章 近づく心と重なる唇
 それから一週間。事務所のパソコンでメールボックスを確認した繭は「ふぅ」と細いため息を落とした。朝からメールボックスのチェックはすでに三回目だ。繭の落ち着かない様子に気がついた慎太郎が心配そうに声をかける。

「このところ元気ないけど、なにかあったの?」
「えぇ? ないですよ、なんにも! 私はいつもどおりです」

 あははと、無理やり作った笑顔で繭は答える。自分の頬をペチペチと叩いて、邪念を振り払う。

(高坂先生からの連絡を待ってる……なんてことは絶対にない!)

 それに、どう考えても連絡がないほうがいいのだ。たいした怪我でなかった証拠だろうし、旬太のことがバレる心配もしなくて済む。連絡があって喜ぶべきことはなにもないはずなのに……繭の気持ちは沈むばかりだ。

「今日の川口さんの約束は何時だっけ?」

 慎太郎の問いに、繭はスケジュール帳を開きながら答える。

「夕方の四時半ですね」

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