彼と私のお伽噺

「じゃぁ、おふたりで手を繋いで向かい合ってもらっていいですか?」

 カメラマンが出してくる指示におとなしく従う昴生さんだったけど、もともと笑顔で写真を撮るのが得意なタイプではないから、終始表情が固い。


「昴生さん、顔怖いですよ」

「知るか。こんなに長く、いろんな格好で撮られるなんて聞いてない」

「計画したのは昴生さんのくせに」

「うるさい……」

「旦那さん、奥様のことをウエストを持つ感じで持ち上げられますか?」

 向かい合って胸の前で手を繋ぎあった昴生さんとくだらない言い合いをしていると、カメラマンの指示がとんでくる。それを聞いた昴生さんが、いきなり私の腰をつかんで持ち上げたから、びっくりして思わず彼の首に腕を回してしがみついてしまう。


「重……」

「思ってても言わないでください」

「冗談だ、って」

 眉根を寄せて苦情を言ってくる昴生さんのことをジトッと睨むと、彼が私を見上げて眩しそうに微笑んだ。

 そんな私たちのそばで、カメラのシャッター音が響く。

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