冷めない熱で溶かして、それから。


 このままだときっと、流されてしまう。
 すでに呑まれそうだったけれど、何とか抵抗することができた。


「松野くんのバカ……‼︎」

 私は松野くんに向かって叫び、逃げるようにしてその場を後にした。


 せっかく心配して様子を見に来たのに、こんなことをしてくるなんて。

 まだ胸がドキドキする。
 顔が……いや、全身が熱い。


 キスって、あんな前触れもなく突然されるときもあるんだ。

 まさか後輩の松野くんに振り回される日が来るなんて……‼︎


 すごく慣れている……というか、上手かった……し、きっと私をからかいたかったのだろう。

 それにしても最低な人。
 好きでもないのにキスしてきて、私を弄んでいるのだ。


 しばらくは松野くんと口をきかないと心に決め、『平常心!』と心の中で唱えながら教室へと戻った。

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