魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
注*この物語はフィクションであり、霊に関する記述も全く作り物です。除霊方法など試さないように。
「そっちの女は魔力ゼロか、捨ててこい。すぐに次の召喚にとりかかれ」
 石造りの部屋。
 魔法陣のような模様の描かれている床。
 白装束の魔法の杖のようなものを持った人達数人。
 魔力?
 召喚?
「ほら、ぐずぐずするな。立て」
 何が起きたか分からず冷たい床に座り込んでいた私を、2人の鎧を身にまとい剣を手にした男が両側から腕を持って引っ張った。
「あら、由紀姉さん、捨てられちゃうんだ。ふふふ、仕方がないわよねぇ」
 私よりも前に、魔力が高いと驚かれていた従妹が私を蔑むような眼で見る。
「私は魔力が高いって言われていたから、聖女かもしれないわ。どうしましょう、王子に見初められたら。まぁ、たとえ由紀姉さんに魔力があったとしても王子に見初められることはないでしょうねぇ。よかったじゃない。むしろ、その見た目に即して魔力もなくて。みじめな思いをしなくて済むんだから。くすくす」
 かわいくて常に男の子たちに囲まれにちやほやされていた従妹の八雲きららは、おしゃれに興味がなかった私に時々こうして絡んでいた。あまりに素行がひどいときは注意もしたりしたけれど「由紀姉さん、私がかわいいからってひがんでるんですか?」と笑っていた。
 人前で指摘しようものなら「由紀姉さんが私をいじめるんですぅ」なんて周りの男の子たちに泣きついていたたけれど……。
 ぶれない。
「やだ、睨まないでよ。きらら怖い~。もう、ねぇ、捨てるなら早く捨てちゃって、ね?」
 と、この状況が理解できずに茫然としている私とは対照的に、一番のイケメンを見つけて甘えた声を出している。
 こんなわけの分からない状況に陥ったら、知り合い同士力を合わせようという気はさらさらないようだ。
 腰が抜けてろくに立ち上がれない私を、鎧の男二人はぞんざいに腕を持って引きずっていく。
「ばいばぁーい、由紀姉さん。あ、恥ずかしいから私の知り合いだって言わないでよぉ。もうほかに親類もいないんだしぃ、顔合わせる必要なんてないわよね?」
 イケメンの腕を取って、私に向かってきららがにこやかに手を振っている。
 そして、声に出さずに、口が動いた。……ざ、ま、あ……と、動いたように見えたのは、気のせいだろうか。
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