魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 私をずるずると容赦なく兵は引きずっている。とても女性に対する扱いではない。
「なんで魔力ゼロの低級民が召喚されるんだ?」
「本当だよなぁ。今までは魔力だけなら上級民以上の者ばかりだったよな。もう一人の綺麗な子は十分な魔力があるのに。こっちの変な顔のは……」
 兵がさげすむような目で私を睨み付ける。
 変な顔?いや、おしゃれ皆無の前髪長めで黒ぶち眼鏡でノーメイクだけれど。可愛くはないけれどよくある顔だよ。変だと言われるほどじゃないよ。
 階段を上がり、石造りの部屋から真っ赤な絨毯が敷き詰められた廊下を通って小さな扉から外へ。
 いや、これ、あれだよね、どうも……。
 地下室で召喚魔法が行われて、日本から召喚されちゃったあれか?
 しかも、もし魔力が非常に高いと喜ばれていたきららが聖女だとしたら、私って巻き込まれたのでは?

「魔力ゼロ。陛下より捨ててくるようにと命を受けた。頼んだぞ」
 裏口らしき場所から外に出され、ずるずるとしばらく引きずられ、兵たちに乱暴に投げ捨てられた。
 捨ててこい……と、確かに、口ひげ生やした偉そうなやつが言っていた。
 ちょっと待って、勝手に召喚しておいて、捨てる?
 魔力ゼロだったから?役に立たないと判断したから?いや、役立たずなら日本に帰してよっ!聖女がいればいいんでしょ!
 と思ってからぞっとする。
 日本に帰さずに、どこかへ捨てに行かせるのはなぜ?日本に帰す方法がないから?
「魔力ゼロ?あーあ、召喚魔法もタダじゃないはずだ。とんだハズレを召喚したもんだ」
 歯が何本か抜け落ちた男に唾を吐き捨てられた。
 なんで?私、何も悪いことしてないどころか、被害者だよね?
「ほら、乗れ」
 兵たちに命じられた小柄な男が、地面に敷かれた3畳ほどの板を指し示す。
 乗れ?板の上に?
 訳が分からないまま座り込んでいたら、背中を蹴られた。
「さっさとしろ。他にも仕事があるんだ。ったく、汚らわしい低級民。魔力だけでなく、脳みそまでゼロか?」
 倒れこむようにして板の上に両手両膝をつく。
「【浮遊、風の力よ、追い風となって向かう先へと進ませよ】」
 小柄な男が板の上でつぶやくと、板が浮かんだ。驚いている間に、1mほど地面から浮き上がった板が動き出す。スピードは自転車くらいだろうか。
「ま、魔法?」
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