魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
「ディラ、簡単にダメとか言わないでっ!」
『いや、でも、300年の間に、ずいぶん見た。街へ向かう途中で息絶えた者。街から出て行くあてもなく弱って亡くなる者』
 ディラの言葉に、怒った自分が恥ずかしくなる。
 そうか。ディラは冷たいわけじゃない。きっと、私に声をかけたように、皆に声をかけ続けたのだろう。ただ、幽霊の声を聴ける人間がいなかった。
 無駄だと、わかっていても300年間……声をかけ続けた。300年間、手が届く距離……だけれど、声が届かない人たちが亡くなっていくのを見続けた。きっと、エリクサーや収納鞄の埋まっている場所を忘れずに覚えていたのも、いつか誰かを助けるため。
「そうだ!私にはエリクサーがある」
 指につけて舐めるだけでも助かる霊薬。
 慌てて倒れた人に向かって駆けだす。手にはディラの剣。ああ、走りにくい。
 ……。1分1秒でも早く駆け付けたいのに。2リットル入りのペットボトル2本くらい持って走ってるみたいだ。
「ごめん」

 仕方がない。私は体力には大いに自信がない。
 コンサートの最後に丁寧にマイクを置くように、地面に剣を置いて再び走り出す。
『え、ユキー、置いてかないで!僕を捨てないで!ユキー!』
 捨ててない、捨ててない。
 最後は体力がなくて走ってるんだかなんだか分からないスピードになっちゃったけど、およそ500mほどの距離を走り切る。
 はーはー、ぜーぜー。
「大丈夫?」
 よくよく考えれば、相手がどんな人物かもわからない。盗賊だとか悪い人が私をおびき寄せるために倒れたふりをした可能性だってある。と、声をかけてから、ここが日本と違う世界だと思い出す。人の命は日本よりずっと軽い。
 声をかけたけれど、すぐに返事は帰ってこない。
 恐る恐る、上にかぶっている布を取ると、中から現れたのは、18,9歳くらいの少年だ。いや、そう見えるだけで、実際の年齢はよくわからない。もしかすると20歳超えてる?とにかく細い。がりがりに痩せている。飢餓で何人も死んでいる地域の子供たちの写真を思い出す。
 肩まで伸びた濃茶の髪は、バサバサで栄養が取れていないことが分かる。肌は日に焼けてはいるけれどもともとは白いのか、いや褐色?か?なんせ、垢まみれで薄汚れていて分かりにくい。唇がカサカサにひび割れている。
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