魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 急いでディラの元へと戻る。
『よかった、よかった、ユキ、会いたかった~』
 って、まだ5分も経ってない……いや、500mの距離をそんな短時間で行き来できないか。私の体力、日本人30歳女性の平均的なもの
だからね。500m往復、1キロ。そんな距離、日本人女性の8割は走らない生活だと思う。
 剣を抱きかかえるようにして持つ。
『ユキ……あ』
 ディラが、私の背中に両手を回し、顔を私の頭に乗せた。
 絵面だけなら、イケメンに抱きしめられてる。一瞬顔が真っ赤になるけれど。
「ディラ、別に再会の抱擁とかじゃないからっ!」
『え?違うの?僕はすごく再会を喜んでるんだけど』
 だから、30分も離れてなかったでしょう!
 それに、私はイケメンに自分から抱き着くなんてそんなはしたない人間ではない。……いや、日本人はハグをおいそれとする文化じゃないから。
「剣をこうして持つのが一番いいから、こう持っているだけ!それとも、地面を引きずってもいいならそうするけど」
 ディラが泣きそうな顔をする。
『ふ、普通に腰にぶら下げるとか、背中に背負うとか……』
「ごめん、故郷じゃ、剣を腰にぶら下げるのも背中に背負うのも普通じゃなかったから……それに、重たいんだよ」
『重……あ、そうか。女性には重い?いや、でもアイラはもっと太くて重たい剣を振り回してたよなぁ』
 そのアイラさんとやらを基準にしないでっ。絶対普通基準じゃない。
『あ、なんか、そうか。僕、ユキに運んでもらってるってことだよね。男なのに女に荷物持たせるとか……』
 剣は胸元に抱えているけれど、剣に取りついているディラは私の隣に姿を現すようにしてもらってるんで、横顔をちらりと見る。ディラが目に見えて落ち込んだ顔をしている。

『重たいものをユキのように小さくて非力でかわいい女性に荷物を持たせてしまうなんて……死んだ方がましだっ!』
 いや、死んでますけど。
『とは思うけれど……僕は、剣を置いて行ってくれとは言えない……もう、ユキと離れて生きていくなんて、できそうにない……』
 生きてないですよ……。
『ううう、駄目だ、ユキと離れるなんて、無理……』
 イケメン幽霊が泣き出した。
 ……マジ泣きか。
 ディラを抱えて少年、いや青年?大学生くらいの男の子はなんと表現すべきなのか。……のところへ戻ると、少年が真っ青な顔をして私を見た。
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