魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 が、これ、どうすれば水が出るの?呪文とか知らないけれど……。えーっと。
「【水を出して】」
 水の魔石からジャーっと水が出てきてコップを満たした。
 おおお!おっと、こぼれるこぼれる。このまま少年のコップにも水を入れる。って、こぼれるこぼれる。
「【ストップストップ、もういいから】」
 で、水は止まった。なんだ、呪文じゃなくてお願いすればいいのか。
「さぁ、どうぞ」
 顔をあげると、少年がまた青ざめている。いや、だから、何で?
「魔力0と言ったのは……嘘……?」
 ああ、水を出したから?
「本当よ。今は、これ、水の魔石で水を出したの。私の力じゃないよ?」
 手の平に乗せて少年に見せる。
「水の……魔石?なんだそれ?」
 はい?
「えーっと……知らないの?」
 この世界の常識じゃないの?
 どういうこと?

 ディラの顔を見る。
 ディラが首をかしげる。
『いや、子供でも知ってるよな?ダンジョンのモンスターを倒すと魔石が手に入る。魔石には水、火、土、風、光の属性の物があって……って』
 困ったな。少年が……って、いつまでも少年っていうのも失礼か。
「知らないと言えば、名前なんて言うの?私のことはユキって呼んで」
「俺、ネウス。……俺も妹も、小さいころから街の外にいるから……知らないことが多いんだ。ごめん。でも、ユキ……俺はユキのものだから。俺ができることなら、なんだってユキのためにしてやる、いや、させてくれ」
 いや、謝ることじゃないし。
 むしろ、異世界から来た私のほうが知らないことだらけだろうし。
 っていうか、いやいや、奴隷扱いしないからね?ネウス君が私のものだなんて思ってないって。
「飲んだら出発しましょうか。あ、じゃないや。私は休憩できたけれど、ネウスはそれ探しに行ってくれて休憩できてないよね?もう少し休んでいこう。あれ?ここでちょっと待ってて」
 ディラとネウス君を置いて、その場を離れる。20mほど進むと、やっぱり見間違えじゃなかった。
 うずくまってる霊がいる。存在がすごく薄い。両手を合わせて拝めばすっと姿を消した。
 誰にも看取られなかったことだけが心残りだったのかな。
 霊が消えた場所が光を受けてきらりと光った。
「あー、物に付いてたのかな?」
 ちょっと掘り起こすと、金貨が出てきた。
「お金だ。お金に執着してた?」
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