契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 デザインは石丸が担当してくれているので間違いはない。
 おかげでミルヴェイユらしいデザインでブースは仕上がっていた。

 実際に店頭でご案内するのは販売員だが、彼女達はお客様との接点も多く、お客様のことについては詳しい。

 ミルヴェイユの最重要顧客はデパートの創業者一族である成田家だ。社長の奥様とご子息、そのお嫁さんが来ると聞いている。

 義理の母娘のはずだがとても仲がいいのだ。
 奥様はたしか儚げでとても美しくお嬢様っぽい方でお嫁さんの方は割とシャキシャキした方だったと記憶している。

「成田様の担当は」
 パソコンで顧客情報を確認しながら美冬が口を開く。

「はい。私です」
 手を挙げたのは林というデパート担当の営業だ。

 営業ではあるけれど、積極的に店頭にも立ち、お客様からも絶大な信頼のある人物だった。

「ありがとう。販売記録を見るとね……」
とパソコンを持って隣に立つと、林は画面よりも美冬が画面を支えている指の方が気になるようだ。
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