契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「空くわけないでしょ」
「そんな大きな瞳で見つめていたら、空きますよ。多分……」
「真剣に考え事してるのに」

 膨れた美冬に杉村は柔らかい笑顔を向けた。
「何をそんなに悩んでいるんです?」
「うん、グローバル・キャピタル・パートナーズからのメールね……」

 杉村にも同じメールは来ていて確認していたので頷く。

「ご相談ってどういうことなのかしら?」
 ゆるりと美冬が首を傾げる。
 さすがの杉村も疑問には思っていたところだった。

「まあ、ご相談と言われると気になるところではありますよね。話したい、何らかの意向を確認したい、いろいろあるとは思いますけど」

 杉村の発言を聞いて、パソコン画面に映し出されているメールにまた目をやって、美冬は考え込む様子だ。

「考えても仕方ないですよ。ボールは向こうにあるんですから」
「うん」

 美冬は若いけれど、経営者としてはよくやっている方だと杉村は思っていた。

 会社の舵取りは楽なようでいて意外と難しい。そのバランス感覚はさすがに椿会長の孫だと感心する。
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