契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした

21.守られていること

 美冬は槙野の膝の中でタブレットを見ていた。

 槙野は先程から美冬の髪を触ったり、後ろからきゅっと抱きしめたり、胸に触ってぺしっ!と美冬に、はたかれたりしている。

 マンションの中で休日を過ごす二人はリビングのソファの上でぴったりとくっつきながら結婚式をあげる場所について、検討していたのである。

 ぴったりと……と言うよりも槙野が美冬を足の間に置いて、美冬は槙野を背もたれ代わりにしているような状況なのだけれど。

「ホテルのチャペルとかかなー」
「まあ、それがいちばんいいだろうな?」
「祐輔の都合のいい所があるんじゃないの? 取引先とか?」

 槙野は少し考えるような様子を見せた。
「取引先はあるが、決めるなら明確に理由があった方がいいな。むしろ、彼女がここがいいといったので……くらいの」

 確かにいくつもある取引先の中からここ、と決めるのであれば、きっちりとした理由付けが必要になるのかも知れなかった。

「ふーん……会場見に行ってみる?」
「確かに。そうだな」

 それで、ブライダルフェアとかそんな時に見に行くのかと思えば、槙野はさっさと秘書に電話して、見学の手配をしてしまったのだ。
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