契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 白いクロスをかけた大きなテーブルを挟んで、向かいにいる槙野は切り込むように美冬を見ていた。

 好みではない、と言うなら美冬にも槙野は好みではない。

 なんせヤのつく職業の人だと思ったくらいだ。

 それにきっと槙野の好みはモデルのようなナイスバディの華やかな美女なのだろう。
 改めて槙野を見たら納得だ。

 背が高く、ブランド物に負けないくらいの迫力といかにもな押しの強さ。経営者然としたその風貌。
すらりとしたナイスバディの美女が並んだら相当な迫力だしお似合いだ。

(どうせ童顔だもん。好みじゃなくて悪かったわよ)

 だからそれについては触れないことにした。
 契約婚であることはお互い承知の上なのだ。

 なんなら、今日はその条件のためのうち合わせなのだし。

「これがミルヴェイユの服です。可愛いでしょ?」
 美冬はにっこり笑って槙野に服を見せた。

「なるほどな。木崎さんも勧める訳だな。特別、と言うのも分かる。品があっていい」

 とても裏表のない正直な性格なのだということはよく分かった。
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