契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 美冬も腹芸はできない方だという自覚はある。
 そういうところは気が合いそうだと思った。

 あらかじめ言われているのか、ギャルソンは綺麗な仕草でグラスに水を入れそのまま立ち去った。

 姿を完全に消したのを確認して、槙野が口を開く。

「止めるなら今だが、本当に構わないのか?」
 口を開いた槙野から聞こえてきたのは、思ったよりも穏やかな声だった。

 美冬は目の前の白いクロスをじっと見つめる。

 どうして今になってそんなことを確認するのだろう。

 白いテーブルクロスは汚れ一つない。
クロスはあらかじめ汚れが落ちやすい加工をしてそういう素材を使っているのだ。

 その白い布を見ながら改めての槙野からの確認に、美冬は後悔しているのかなという気持ちになった。

「お前はこの前、夫婦、といったらはしゃいでいただろう。結婚に夢持ってるんじゃないのか? なのにこんな形で決めてしまっていいのか?」

 そう。はしゃいでいた。
夢も持っていた。
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