契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「それ、さっきの契約書に入ってました?」
 にっこり笑って美冬は言い返す。

「家賃負担について記載があったろうが」
「でも一緒に住む時期までは記載されてなかったわ」

 槙野のこめかみが一瞬揺らいだ気がした。
 怒ったのかと思えば、美冬は震えるような笑顔を向けられたのだ。

 悪魔だ!悪魔がここにいるっ!
 笑顔だけど目が笑ってないっ!

「確かにな。では時期を記載したものを改めて用意しよう」

 怖っ!肝が冷えるよ……。
「え? じゃあ、さっきの契約書は無効ですか?」
「なわけあるか。差し替えで十分だ。言っておくが、お前がサインした時点でさっきのは有効」

 あっさりとそう言って、槙野は食後のコーヒーを口に運んでいた。

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