契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「なんでも食べれるのか。それはいいな。俺は偏食があまり好きじゃないんだ。じゃあ、おまかせでもいいか?」

 大将にはお任せで、と頼んで生ふたつと女将に槙野は声を掛けている。

 その様子はとても慣れていてお店の常連なのだろうという感じがした。

 槙野は美冬にそんなことを聞いておいて、自分はスマートフォンで何かしている。

 手持ち無沙汰な美冬はビールを飲みつつ、突き出しを箸でつまんだりしていた。

「悪いな。会社にメールとか送っていた」

 そう言えば槙野は仕事を抜けて祖父に挨拶に来てくれていたのだった。美冬のために。

「そうよね。わざわざごめんなさい。本当に忙しいのね、槙野さん」

「いや……なるべくそう見せたくはないんだがな。美冬は指輪、どんなのがいい?」

 見せられたスマートフォンの画面には何やらキラキラした指輪と130万円~という金額が表示されている。

「え……」
 婚約指輪だ。確かに必要だとは思うけれど、付けられる期間は短いだろう。

──それにこの値段!?

 さすがに一瞬ひるんだ美冬に、槙野は別のブランドの商品を見せる。
< 84 / 325 >

この作品をシェア

pagetop