雨降り王子は、触りたい。
「あっ…」
「…っ」
────カシャンッ
お互い反射的に手を離して。
行き場のなくなった辞書は音を立てて地面に落ちた。
やってしまった…………!
「ご、ごめんっ」
三咲は目を丸くしたかと思うと、咄嗟にしゃがみ込む。
私もそれを追うようにして腰を落とした。
俯く三咲の瞳には────メガネで見えにくいものの、涙が滲んでいた。
……なにやってんの、私。
三咲の秘密知ってるのに。
知ってるからこそ、誰より気を付けないといけないことなのに。