雨降り王子は、触りたい。
ハッとした私は三咲の顔を覗き込むと。
案の定、メガネの奥の瞳はキラリと涙を含んでいた。
「赤髪……助けて」
今にも消えそうな声が鼓膜を揺らす。
た、助けてって……
それが何でなのかとか、何からかとか、全くわからないけれど。
私の腕を掴む三咲の手が、限界を示しているような気がして。
私は大きく頷く。
「行こっ」
そして、三咲の手を取った。
幸い和佳とのえるは帰る帰らないの攻防をしていて、他のメンバーは店に入ったようで。
私たちのやりとりには気付いていなかった。
「ごめん、先帰る!」
そう言い残すと、私は三咲の手を引き、駅の方向へと走った。