雨降り王子は、触りたい。
何も言わずに、足元で揺れる雑草を目で追う三咲。
……あー、ダメだ。
なんか、いっぱいいっぱいだ。
私がギュッと、ヘアクリップを握りしめると。
「秘密、守ってくれてありがと」
三咲の声が、微かに空気を揺らした。
─────ずるいよ、三咲。
秘密なんて守って当たり前のことなのに。
むしろ私の勝手な行動で、共有することになってしまったのに。
「こっちの方がありがとうだよ…」
言葉にならない、熱い気持ちがじんわりと胸を支配する。
…一生、大事にしよう。
手の中ではヘアクリップが相変わらず輝いていて。
だけど隣に座る三咲も、負けないくらい眩しかった。