極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 本心からの好意など、そこにはない。俺自身に惹かれているというよりも、海堂翔一郎を味方につけろという親の意向が強かったのだろう。
 あからさまに、あるいは控えめを装って媚びを売る彼女たちはとても気色悪かった。

『翔一郎さん、あなたは海堂家の跡を取るのだから、それにふさわしい女性をめとらなければなりませんよ』

 母はいつも俺に『海堂の後継者たれ』と口を酸っぱくして言った。

『あなたが正統な跡取りなのですからね。あの女の息子などに負けてはいけません』

 正妻になれない劣等感と、自分が長男を生んだのだという優越感がないまぜになった母の複雑な心情。
 大人になってからなら多少は理解できる。だが、少年時代にはただ母が醜く気持ち悪く思えて、俺はひそかに鬱屈した日々を送っていた。





 そんな中、セレブリティクイーンの船上で毎日をともに過ごすようになった少女、マリカ。彼女は数日のうちに、俺にとって安らぎを感じる存在になっていた。

『ショウおにいちゃまはすごいのね。ピアノもヴァイオリンも、どうしてそんなに上手なの?』

 大きな目をキラキラさせて俺を見上げてくるマリカ。
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