極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 その後も彼女は俺に懐いてきて、あっという間に『ショウおにいちゃま』と呼ぶようになった。人見知りな将生もほがらかなマリカにすぐ打ち解けた。

 ふーん、俺の拒絶は伝わらなかったのか。肝が据わっているのか鈍感なのかわからないが、とにかく社交性はあるらしい。

 そんなふうに斜に構えていた俺をマリカは振り回した。

 プールに行きたい、アイスクリームが食べたい、かけっこしよう、かくれんぼはどうしてだめなの――。

 それは年端のいかない子供としては当たり前の行動だったのかもしれない。けれど、そのころ俺のまわりは普通ではない子供ばかりだった。
 親の地位を秤にかけて自分たちの上下を決め、成績や人間関係を注視して、将来性や人心掌握力を互いに推しはかるような学校生活。

『ショウおにいちゃま、ピアノ弾いて?』

 ピアノの腕以上の見返りを求めず、俺におねだりしてくるマリカは純粋でかわいかった。
 マリカはどんなにこちらが優しくしても『付き合いたい』とか『婚約したい』などと言い出すことはない。

 海堂家の嫡男として、俺は少女たちの注目の的だった。
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