極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました～一途な海運王の華麗なる結婚宣言～

　こんな違う世界に住んでいるようなセレブの知り合いがいるわけないし。本当に誰？

「私は海堂翔一郎です」
「はい……？」

　名乗ってから何かを期待するように一拍置いて、彼はわたしの顔をのぞきこんだ。

「ご存知ないですか？」

　かいどう、しょういちろう――そんなに有名な人なのかしら。
　芸能人、アスリート、政治家、その他もろもろ。有名人の名前を脳内で検索しても該当する人物はいない。情報通というわけではないので、わたしが知らないだけかもしれないけれど。

　そのいやに美形な男は、なぜか少しがっかりした雰囲気だった。
　だけど、一瞬で気を取り直して、わたしに完璧な笑顔を向けた。優しくて落ち着いていて、どこかうさんくさいビジネススマイル。

「お召し物が汚れてしまったようですね」
「お召し物？」
「ええ。あなたのかわいらしいドレスに染みが」
「あ、はい。えーと」

　彼が何を意図しているのかわからなくて、一瞬言葉を失う。
　さらに笑みを深めた男が、わたしの片手を取って軽く引っ張った。

「どうぞ、こちらへ」
「あの、どこへ行くんですか？」