極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「ああ、そういえばセレブリティクイーンのジュエリーショップはオークラの系列でしたね」

 翔一郎さんは今気づいたという顔をした。わたしにとってはうさんくさい、一見さわやかな笑顔は、たぶん御曹司の仮面だと思う。

「はい。何かご用命がございましたら、ぜひわたくしにお申しつけくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます、大倉(おおくら)のお嬢様」
「いやですわ、綾乃(あやの)とお呼びください」

 そうそう、彼女はジュエリーオークラのお嬢様だった。
 ジュエリーオークラといえば世界的なジュエリーブランドだ。日本の宝飾品業界の草分け的な企業で、銀座に大きな本店がある。
 もちろんわたしは外から見ただけで入ったことはない。

「それでは、まず彼女と店内を拝見しますので」

 わたしの肩を優しく抱き寄せる翔一郎さん。
 仲のいい婚約者アピールなんだろうけど、お嬢様――綾乃さんには通じていないみたい。彼女は翔一郎さんの反対側のひじにそっとふれて、ショーケースの前に誘導するように軽く押した。

 翔一郎さんはわたしをちらりと見て、少し眉を下げた。
 仕事上の付き合いがあるので邪険にできない、すまない、というところだろうか。
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