極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 あれは……。

 あれは、遠い夏の日。

 あれは、初めて乗った大きな船の上。

 あれは、誰だった……?

 面倒見のいい年上の少年。そして、引っ込み思案な幼い弟。

「ショウ……おにいちゃま?」

 驚いた表情で、わたしを凝視する翔一郎さん。

 抜けるような青い空。紺碧の海。純白の雲。
 一瞬、あの夏を幻視する。

 わたしの目の前で、あのころと同じヘーゼル色の瞳が驚愕から歓喜へと色を変える。

「鞠香、思い出したのか?」

 翔一郎さんの背後を見ると、そこには将生さんが立っていた。
 仲のいい兄弟。翔一郎さんのシャツの裾をつかんで隠れていた小さな男の子。

「サキ、ちゃん……?」

 将生さんは翔一郎さんとよく似たヘーゼル色の瞳をまん丸にして、わたしを見つめた。
 その姿に無邪気な少年の面影が重なる。
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