ダークグリーンに魅かれて
時間になり、カウンターに行くとそこに絵里の姿はなかった。

「あの、鈴木さんは?」

カウンターの男の人が笑顔で答える。

「今、休憩中です。呼びましょうか?」

「いえ、いいです。沙里が『また会おうね』って言っていたとお伝えください」

そんなこと、心にも思っていなかったけれど。

「承知しました。お会計な3時間で2600円です」

拓巳くんが会計を済ますと外に出た。

「エリー・・・じゃなかった、絵里のこと、どう思った?」

自分でも分かるくらい、暗い声で聞いた。

「・・・?大人っぽい娘だな、とは思ったけど。どうしたの、泣いてるの?」

「お願い、エリーのところに行かないで。サリーと一緒にいて」

自分で分かるくらい、声が震えていた。

「・・・沙里?僕は沙里が好きだよ。鈴木さんのところになんか絶対行かない」

中学時代。サリー・エリーの愛称で仲の良かった2人。中三の時、私に初カレが出来た。絵里の彼と4人でよく遊んだものだった。が、2年前、絵里が当時の彼に振られると、待っていたかのように2人が急接近した。そして、11月のあの日・・・わたしは井の頭公園で彼に別れを告げられたのだ。

「僕は、君だけを居続けるよ、沙里。浮気なんてしない。約束する。君だけだよ」

その話をすると、拓巳くんは私を抱きしめてそっとキスをした。・・・って、えっ?今日会ったばっかりの人と私、何をやってるの?でも、拓巳くんのキスは甘くて優しくてとろけた。この人なら・・・この人となら、大丈夫かもしれない、と思った。
< 11 / 20 >

この作品をシェア

pagetop