ダークグリーンに魅かれて
「あのね・・・」

私は、拓巳くんの耳元で言った.

(元カレには、キスまでしか許してないから)

言ってから、顔が紅潮していく音を聞いた。隣で拓巳くんもりんごのように真っ赤っかだった。

「これ以上、一緒にいたら止まらなそうだ。連絡先、交換できる?」

「うん・・・。今日は、家に何も言ってきてないから、そろそろ帰らないと。交換しよ、連絡先」

「沙里、実家なんだね。どこの駅?」

「三鷹。隣の駅なの。一駅であなたを見つけた私ってスゴくない?」

文字通り、一目惚れだったんだもん。

「だな。僕は国分寺でアパートに一人暮らし。いつか、遊びに来てよ」

どきんっ!きっと他意は無いんだろうけど。必死に平静を装って提案する。

「私、手料理ふるまうね」

「おっ、楽しみにしてる。使ってないけど、うちの親が1人暮らしするなら、って料理道具一式、もたせたんだよね」

「料理、しないの?」

「うん。ほぼ、外食。じゃなけりゃ、コンビニ弁当。わびしいもんよ」

とほほ、と情けない顔をした拓巳くん。私は思わず、ぷっ、と吹いてしまった。

「ひどいな。男にとって、料理はハードルが高いんだぞ!」

ま、人によると思うけどねぇ。うんうん、とうなずく。

「そんな拓巳くんのために、沙里、いつか腕を振るっちゃいます!」

「楽しみにしてる」

そんな日が早く来るといいな。拓巳くんとだったら、デザートが私でもいい、なぁんて、ね。

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