ダークグリーンに魅かれて
「ただいま~」

元気なイケメンボイスが聞こえてきた。

「沙里の彼氏が来てるって?ケーキ買ってきたぞ」

拓巳くんが立ち上がった。

「沙里さんとお付き合いさせてもらってます、大坂拓巳です。南条大学1年生です」

「まぁまぁ、そう固くならずに。座ってください。沙里の父です。ラジオ局でDJやってます。沙里をよろしくお願いします」

拓巳くんに握手を求めたパパ。フランクさをかもし出している。こういうとこ、さすがDJ、って思う。拓巳くんが握手に応じる。

「渋い声で素敵ですね」

「ありがとう、よく言われる」

一同、どっと笑った。いい感じだ。

「そろそろ、夕食にしますね。沙里、運ぶのを手伝って」

「は~い」

「沙里を、大切にしてくれ、な」「はい」

パパが拓巳くんに行っているのを後ろに聞きながら、キッチンに向かった。シーザーサラダとビーフシチュー、ライスを運んでいく。

「おっ、今日もおいしそうだな」

とパパ。

「母さんのビーフシチュー美味しいもんな」

と兄さん。

「ホント、おいしそうですね。沙里さんのお母さん、料理上手なんですネ」

と拓巳くん。

「そんなに褒められると照れるわx。食べてみて」

「いただきま~す!」

みんなで食べ始める。ママのビーフシチューはブラウンソースからガーリック、ブーケガルニに赤ワインを加えて、具材と共に圧力鍋で煮込む。牛塊肉がほろほろになっていておいしい。みんなが笑顔になる。

「すごく美味いです。火の通し方が絶妙で、ソースも美味いです」

と拓巳くん。

拓巳くんが座っているのはピアノの椅子。4人テーブルなので、椅子の余裕がなかったのだ。お客さまだから、テーブルの椅子を勧めたのだが、拓巳くんが遠慮したのだ。

夕食を食べ終わると、パパが冷蔵庫からケーキの箱を出してきた。

「沙里と拓巳くんは沙里の部屋で食べるかい?2人っきりになりたいだろ?」

ッッ。思わず真っ赤になりながらも、「うん」と答えていた私だった。


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