ダークグリーンに魅かれて
11月半ばの空気は、冬の到来を予感させそうな冷たさでちょっと切ない。私が前の恋を失ったのも、2年前の11月だった。また、ここに別の男性と来るとは思わなかった。苦い別れの詰まったこの公園に。

「どしたの?」

急に黙り込んだ私を不思議そうに見る深い緑の瞳。

「何でもないよ。緑ってやっぱり安らぐよね」

「・・・?」

深い緑の瞳は、私を安心させる。

「ここは、野鳥とかもいるし、僕はよく来るんだ。大学も近いしね。犬の散歩をしている人も多いよね」

「うん」

ちょうど、トイプードルを連れた女性おtすれ違うところだった」

「ボート乗る?」

私は、ためらった。・・・あの「ジンクス」を思い出したからだ。『井の頭公園のボートに一緒に乗ったカップルは別れる』

「え・・っと」

「まさか、ジンクス、信じてないよね?で、僕らってさ、友達以上恋人未満、だろ?」

友達以上、って思ってくれてるところに、ほっこりとして、じんわり涙が浮かんだ。

「なっ、なっ、なっ・・・僕、何かマズいこと言った?」

「ううん・・・なんか、ジーンと来ちゃって。私も同じ気持ちだよ」

拓巳くんが、ボッと赤くなった。拓巳くんのこんな表情を見るのは初めてだ。もっと、もっと、拓巳くんのことを知りたい。

「なんかさ・・・初めて会った気がしなくて」

「私も・・・初めて拓巳くんを見たとき、懐かしい思いがした」

「あぁ・・・そんな感じかな」

ふふっ、と2人で笑いあう。
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