そんなの関係ないよ!
「おまたせ、亜里沙」

亨くんが鎌倉のガイドブックを持って戻って来た。

「僕なりに、一応のプランは立ててみたんだ。亜里沙、9時出発で大丈夫?」

「うん、平気」

おばさんが、飲み物を持ってきてくれて、「鎌倉、良いわね」と言いつつ下がって行った。アップルミルクティーは、りんごの甘い香りと紅茶の香り、ミルクの香りが合わさって、おいしそうだ。私のために、シュガースティックを置いて行ってくれた。「アップルミルクティーは、ほんのり甘いほうがダンゼンおいしいわよ」と言いつつ。だから、私は、スティックを1本入れてまぜまぜしながら、亨くんに聞いた。

「鎌倉までって、どのくらいかかる?」

「大船までが、15分、大船から鎌倉も15分くらいだな」

・・・と言うことは、駅までの10分の徒歩を含めて40分、待ち時間も含めると9時50分ごろには鎌倉に着くということだろうか。

「まず、ど定番!若宮大路を歩いて鶴岡八幡宮に行こう!玉縄桜は・・・ちょっと時季がはずれてるかもだけど、今年は寒いからどうかなぁ」

「早咲きなの?じゃあ、桜吹雪が見られるかもね?私、鎌倉行ったことないんだけど、鶴岡八幡宮って、有名なの?」

「あぁ、源頼朝ゆかりの神社だからね。三大八幡に数えられることもあるんだよね」

「みなもとの・・・?さんだいはちまん・・・?

亨くんがくすっ、と笑って

「亜里沙には難しすぎるよね?そんなことは気にせずに、立派な神社を楽しめばいいよ。鶴岡八幡宮は、縁結びの後利益もあるから、お揃いのお守り買おうよ」

と優しく言ってくれたのだけど・・・。なんか、ちゃんと理解できてないの悔しい。でも、学校で歴史なんてまだ習ってないもん、とちょっとむすっとなる。

「ほらほら、機嫌治して。縁結びのお守りがあれば、きっとずっと一緒にいられるよ」

「そうだね」

そのお守りをGetするためだけにいくのでもいいのだ!

「鎌倉駅への戻りは、小町通を通って食べ歩きしよう。亜里沙は何が食べたい?」

ガイドブックの小町通食べ歩き、というページを見せられる。ベーグルサンドにからあげ、『紫陽花ソフトクリーム」、ずんだ甘酒にフィナンシェ・・・ん~、どうしよう、どうしよう・・・。と本気で悩んでいると、亨くんが、

「ぷぷっ、そんなに本気で悩まなくても・・・帰りにまた寄ってもいいし、今回だけじゃなく、次回以降もあるしさ。その日の気分で決めようか?」

と楽しげに言った。




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