そんなの関係ないよ!
それからというもの、亨兄は、大忙しだった。夏期講習の後は、授業が終わったあとに塾。9時過ぎまで帰ってこなかった。その時間と言えば、私はもう寝る時間。そして、真面目な亨兄は、土日も勉強に時間を割いていた。

私は、と言えば、代わりに友達と遊ぶ時間が多くなった。亨兄、亨兄、で友達作りに積極的でなかった私に、親友、と呼べる女の子が2人出来た。

1人は、朋美ちゃん。スポーツが得意な、しっかり者の女の子だ。もう1人は優香(ゆうか)ちゃん。読書好きな、物知りの女の子。この年になるまでに、私はお菓子作りとフェルトのマスコットづくりを覚え、2人に「女の子らしいね」と言われていた。全く別のタイプの3人だったが、何をするにも一緒、だった。

その2人には、それぞれクラスに気になる男の子がいるようだった。

「亜里沙ちゃんは?好きな子いないの?」

朋美ちゃんが聞く。

「この学年には、いないよ。でも・・・」

「でも?」

「えへへ、ちょっと、これは秘密」

6つも年上の少年に恋しているといえば、ものすごく驚くだろう。そして、ちょっと距離を置かれてしまうかもしれない、と思った。この恋心は、私だけの秘密。

そして、バレンタインデーが近づくと、3年生とは言えどみんなそわそわしていた。友チョコだけ、と言う子もいたけれど、何人かは本命チョコを考えているようだ。

「バレンタインデーと言っても、学校にお菓子を持ってくるんじゃないぞ。チョコを上げたい子は、直接、家まで持っていくように」

今年新任の谷優作先生は、釘をさすように言った。先生に渡したい子もいるんじゃないのかなぁ?と思ったりするのは、私が年上の人を好きだからだろうか。
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