背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
高校生編

瞳に映るのは

 高等部へ進学した一花から、ブレザー姿の写真が送られてきた。両隣に写っている子は見覚えがあるから、中等部の時から一花が仲良くしている子たちだろう。

 一花は髪を下ろして、真新しい制服に身を包み、嬉しそうな笑顔を見せている。やっぱり下ろした方が似合うな……そんなことを思いながら、複雑な気持ちになる。

 これって俗に言う高校デビューじゃないのか? 中等部の三つ編みだった頃に比べ、明らかに目を引く。一花の背後に写る男子生徒の視線に(よこしま)な何かを感じ取り、尚政はイラっとする。

 高校からの外部生も合流するため、一花に興味を持つ(やから)が増えるのではないかとモヤモヤした。

「おっ、一花ちゃんの高校生ショットじゃん! なんかまた大人っぽくなってきたなぁ。中学生の時はあんなにかわいかったのに」

 尚政のスマホを覗き込んだ柴田が、感慨深そうに一花の成長を語る。

「俺たちもおじさんになっていくわけだ〜」

 おじさんと言われて心が折れそうになる。そりゃ現役高校生に比べればおじさんかもしれないが、そこまで差はないはずだ。

「あれからもうすぐ二年経つけど、それでも二人が仲良しってことは、俺と園部の考えは間違っていなかったってことだな」

 柴田がニヤニヤしながら話すが、尚政には初耳だった。

「……二人の考えって何のこと?」
「まぁお前に言うのは初めてだけどさ、一番最初に引き合わせた日は一花ちゃんにも内緒にしてたんだよ。一花ちゃんにお前が気になってるって言われてから、一花ちゃんの素直な性格ならお前を変えられるんじゃないかって園部と話しててさ。確信があったわけじゃないけど、やっぱり俺たちの自慢の後輩ちゃんは、他の誰とも違っていただろ?」
「……お前の思惑通りに進んでいることは癪だけど、でも……一花と出会えたことには感謝してるよ」
「ただ、俺たちが高校生に手を出したら犯罪だから気をつけろよ!」
「いや、別に恋とかじゃないし。今は大事な友だちだから」
「ふーん……いつまでそんなこと言ってられるのか見ものだなぁ。まぁ千葉は天邪鬼だから意外と平気かもしれないけど、そんなことしている間に、誰かに取られちゃうかもしれないぞ〜。一花ちゃん、いい子だからなぁ」

 そう言い残して、柴田は次の講義へと向かった。

 一花は俺のことを理解してくれる大事な友だち。今はそれ以上の気持ちはない。

 尚政は再び一花から送られた写真を見る。なのになんでこんなにモヤモヤするのかな……。
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