若頭、今日もお嬢を溺愛する
“知らない”という罪
明日は、バレンタインデー。
そして、今日は久しぶりの登校日だ。
高校三年生の杏子。
三学期は自由登校だが、笹美とバレンタインの話をしたいと思い、久しぶりに学校で会うことになった。
(普通に会おうとすると、雷十がついてくるから)

「ん…」
朝起きると、雷十が腕枕をして見つめていた。

雷十と一線を越えたあの日から、雷十と一緒に寝ている杏子。
腕枕で見つめられているのも、毎朝のことだ。

「おはようございます、杏ちゃん!
今朝も安定の可愛い寝顔でした!」
「………雷十ってさ」
「はい」
「やっぱ、変態だよね」
「はい?」
「その整った容姿に騙されてるだけで、やってることヤバいよ?」
「え?そうですか?」
「だって、写真!!」
「あ…バレてました?」
腕枕をしていない方の手を指差す。
雷十は、スマホを握りしめている。

(バレバレだっつうの!?)
「何枚撮ったの?」
「えーとぉ~」
「可愛い子ぶるな!キモい!!言え!!」
「ザッと、58枚程……」
「バカか!!」
「だって、可愛いんですもん!杏ちゃんが可愛いのが悪いんですよ!」
「は?」
「はぁ…ほんと、可愛い…
今から抱いていいですか?」
雷十が杏子の頬に触れ言った。

「はい?」
「可愛すぎて、抱きたいです!繋がって、杏ちゃんの中に入ってたい…」

「やだ!」
「えー!どうしてですか?」
「だって、毎晩……」
「毎晩?」
「雷十、毎晩求めてくるでしょ?
きつい。身体がもたない」
「でも、本気で嫌がってる時は、無理矢理してませんよ」
「そうだね」
「ダメですか?」
「なんか、きついの」
「はい。わかりました」
「ごめん」
「謝るのはなしですよ!
杏ちゃんは悪くありません」

「うん。
……………ところで、今何時?」
「えーと、7時回ったとこです」
「じゃあ、起きなきゃだ」
「え?どうしてですか?
もう少し、イチャイチャしましょ?
今日は俺も、夜まで仕事ないので……」
「言ったじゃん!今日は、学校行くって!」
「あ、そうでしたね。
笹美さんと会いたいからって。
………てことは、奴等もいます?」
「奴等?
昴くんと虎太郎くん?」
「はい」
「いないよ。たぶん、女子だけじゃないかな?」
「そうですか!わかりました!
じゃあ…準備しましょう!」

びっくりする程にすんなり起き上がった、雷十。
いつもなら…………
「嫌です!行かないでください!
杏ちゃんと離れたくないんです!」
と、駄々をこねるのだ。
そして杏子を抱き締め、ベットから出さない。

その証拠にここ一ヶ月、笹美と遊びたくて何度も雷十に懇願したが“離れたくない”を理由に、雷十付きでないと外に出してもらえなかったのだ。

「雷十、どうしたの?」
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