若頭、今日もお嬢を溺愛する
「ほんとに食べた!」
文悟の妻、雷十の母親、大悟の妻で杏子の母親・亜子(あこ)の墓参りに向かう車内で、雷十に抗議する杏子。

「え?」
「さっきの!
本当に食べたよね!?」
「だって、柔らかくて気持ちいいんですもん!
それに、俺は杏ちゃんの全てが大好きです。
髪の毛から、足の爪まで……全部!
だから、食べたいです」
真顔で言い放つ、雷十。

「真顔で言うなよ……キモいよ…」

「てことで、もう一回いいですか?」
「はい?」
「チューです」
「嫌!!もう、無理!」
(変になるし…////)

「………はい、わかりました」
微笑み、杏子の頭を撫でた雷十だった。


基本的に雷十は、杏子から視線を離さない。
車に乗っていても、屋敷でも、何処にいても身体ごと杏子の方を向きひたすら見つめている。
そして杏子の話を笑顔で相槌をうちながら聞いて、頭を撫でている。
時折髪の毛で遊んだり、髪の毛を一房取りキスをしたり、頬を突っついたりして過ごすのだ。

「すみません…お嬢、若」
そこへ運転手が、声をかけてくる。
「あ?何だ?」
声をかけてきた運転手を睨み付け言った。

雷十は、杏子以外の人間(文悟と大悟を除く)を信用していない。
なので、三人以外には威圧感と警戒心、嫌悪感が凄まじいのだ。

「申し訳ありません!
この先、渋滞で車が通らなくて……どうされますか?」
「はぁぁ!?
墓は、坂の上なんだぞ!
杏ちゃんを歩かせるのかよ!!?」
杏子以外には、口調や言葉遣いも変わる。

「雷十!!」
「あ、はい!」
「凄むなっつったでしょ!?
いいじゃん!歩こ?今日、お天気良いし散歩みたいだよ?」
「そうですか?
杏ちゃんがそう言うなら……」

ゆっくり車が停まり、降りた二人。
「行きましょ?」
杏子の腰を支える、雷十。

「あ、雷十」
「はい」
「あの…ね…?」
「はい、どうしました?」
「手…繋いでいい?」
上目遣いで見つめる、杏子。

「……////はぁ…何これ…!」
「え?え?嫌?手を繋ぐの」
「俺、もう…死んでもいいや!」
「は?」
「だって…杏ちゃんから“手を繋ぎたい”なんて、そんな……天使の言葉みたいな……幸せで死にそう……!」
「そ、そんな…大袈裟な////!」
「だってぇ…////」

手を繋ぐ、二人。
「杏ちゃん、手…小さくて可愛い…」
「そう?そうなの?」
「はい、可愛いです…とっても!」

「虎太郎くんも、そう言ってたな…」
思わず、呟く杏子。

「は━━━━!!!?」
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