若頭、今日もお嬢を溺愛する
墓に行く途中の大きな木に杏子を追い詰め、両手を付き閉じ込めた、雷十。

「雷十、何!?早く行かないと、おじぃ様とパパが待ってるよ!」
「あいつと…どうして手を繋いだんですか?」
「え?」
「どっちの手を…?」
「え?えーと…右?いや、左だったかな?
………って、どっちでもいいじゃん!」

「よくねぇよ……!?」

「え……雷…十…?」
「早く言えよ…早く…じゃねぇと……むちゃくちゃに犯しそうなんだよ…」
「こ、怖い…雷十……」
(こんな、雷十…雷十じゃない……)

杏子が恐怖に震え出す。
そして、あっという間に目に涙が溜まる。

「………あ…ご、ごめんなさい!!
杏ちゃん!ごめんなさい!」
そんな杏子の姿に、雷十は狼狽えだし慌てて謝罪の言葉を繰り返す。

「雷十…」
「はい」
「いつもの雷十?」
「はい!」
「良かった…」
「はい、ごめんなさい。もう…大丈夫…大丈夫ですよ」
雷十が杏子の頭を優しく撫でた。

「手…繋ご?」
「はい…」
指を絡めて握り合う、二人。

「雷十」
「はい」
「私は、雷十と手を繋いでいたい」
「え…?」
「虎太郎くんに、手…小さいねって言われて握られたんだけど、振り払ったらせっかく友達になってくれたのに、嫌われると思って出来なかったの。
ごめんね…!」
「杏ちゃん…」
「笹美と昴くんが自然に手を繋いでるの見て、なんか良いなぁって思ったの。
私も雷十と手を繋ぎたいって!」

「はい!俺も、杏ちゃんと手を繋いでたいです!」
二人は微笑み合った。

そして墓参りが終わり、屋敷に戻る鶴来組一行。

杏子の部屋に行く。
「杏ちゃん」
「雷十、ギュってして?」
「はい」
杏子を包み込むように抱き締める、雷十。

墓参りの後の杏子は、いつもそうだ。
墓参りに行くと亜子のことを思い出し、悲しみに暮れるのだ。
ゆっくり杏子の背中をさする、雷十。
「俺がいますよ。ずーっと傍にいますからね!」
「うん…ありがと……
雷十は、ママみたいに突然いなくならないでね……」
「はい!もちろんです!」

「お願いだから…雷十にいなくなられたら、私……」
「大丈夫です!約束します!」
「ほんとに?」
杏子は、雷十を見上げた。

「はい!」
「そうだよね!ごめんね…」
「いえ!杏ちゃんは、どうしても不安になっちゃいますもんね!」
「ママは、突然だったから…」

「そうですね、亜子ちゃんの死は……俺の最大の失態ですから……絶対、同じ過ちは犯しません!
俺自身の為にも……
だって……俺の方が、杏ちゃんを失ったら死んでしまうんですから……」
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