不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜

 紗世はオレンジジュースを口にしながら、その様子を眺めていた。きっとどう言おうか悩んでいるんでしょうね。

「波斗先輩が気にしているみたいだから一応言っておくけど、千鶴ちゃんとは仲の良い友達。それ以上でもそれ以下でもありませんから」
「……そうなの?」
「そうです。私だって終わったことをいつまでも引きずりませんよ。もう前に進んでます」
「そっか……それなら安心した」

 心のつかえがとれたからか、波斗はオレンジジュースを一気に飲み干し、もう一杯追加で注文する。

 次は紗世の番だった。ずっと気になっていたことをぶつける。

「……じゃあ先輩は?」

 彼も聞かれることを覚悟していたのだろう。下を向いて頭をかく。

「馬鹿みたいにまだ好きなんだ……ずっと引きずってる……」
「そっか……」

 顔を上げないところを見ると、もしかしたら泣きそうなのを堪えているのかもしれない。

 きっと誰にも話せず、一人でその気持ちに向き合ってきたのだろう。

 紗世はテーブルから身を乗り出し、波斗の頬に手を添える。指に温かいものが触れ、それが涙であることに気付く。

「一人で悩んで辛かったね……」

 波斗の気持ちが痛いほどわかる。本当は今すぐ抱きしめてあげたいくらい。

「先輩、私がカレー好きなだけでこの会社を受けたと思う?」
「えっ……」
「本当はずっと先輩のことが気になってた。もしまだ健先輩を好きなら、辛い思いをしてないか心配だったの」

 紗世はカバンからハンカチを取り出すと、波斗の涙を拭う。

「夏合宿のあの日、私は先輩がいてくれたおかげで傷が開かずに済んだ。だから今度は私が先輩の力になりたいって思ってるの。もし辛いなら私がそばにいてあげる。話もいっぱい聞くよ」

 紗世が言うと、波斗はゆっくりと表情が柔らかくなり笑い出す。

「……紗世ちゃん、かっこよすぎるよ……」
「もうあの頃とは違いますからね! どんと頼ってくれていいのよ。もう一人で悩まないでね。そのために私がそばにいるんだから」
「うん……ありがとう」

 波斗の笑顔はいつも紗世を安心させる。だからこそ、私が彼の笑顔を守ってあげたいの……それはあの日から変わらない紗世の願いでもあった。

「俺ね、紗世ちゃんのことを見習って、期限を決めたんだ。健が結婚する時には諦めようって……。まだその日は来ていないけど、きっと遠い未来じゃないと思う。その時に……その……紗世ちゃんがそばにいてくれたら嬉しいな……」
「それはもちろん……立ち直るまでそばにいます……」

 大丈夫、私があなたを守るから。
 
< 16 / 50 >

この作品をシェア

pagetop