天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
年齢は二十七歳の私より上だろう。
たぶん、三十代前半くらい。
そんなことを考えていると、彼が教えてくれた。
「ひったくり犯は、あの警備員が近くの交番に連れていってくれるそうだ」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます」
よかった、とひと安心してから疑問に思う。
「でも、どうしてあの警備員さんは私を見て笑っていたんですか?」
「一緒に交番に来てくれと言われたんだが、これから彼女を口説きたいから無理だと断った」
なんでもないことのようにさらっと言われ、なるほどとうなずきそうになる。
けれど、言われた言葉の意味を理解した途端、頬が熱くなった。
「口説くって!」
「せっかくフランスに旅行に来たのに、事情聴取で時間を潰されるなんていやだろ?」
慌てる私とは対照的に、彼は平然とそう言った。
私を口説くというのは事情聴取を断るための、ただの口実だったようだ。