天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~


 びっくりした……。
 
 肩から力が抜ける。

 そうだよね。
 こんなかっこいい人が私を口説こうと思うはずがない。

 それにしても、そんな理由で警備員さんが納得してくれるなんて。
 愛の国と言われるフランスらしい。

「本当にありがとうございました。あの、おケガはありませんでしたか?」

 あんな体格のいいひったくり犯をひとりで捕まえてくれたんだから、どこか痛めているかもしれない。

 心配になってたずねると、彼は「大丈夫だ」と首を横に振った。

「よかった」

 胸をなでおろした私を、形のいい眉をひそめ軽く睨む。

「でも、人通りの多い観光地とはいえ、若い女がひとりでぼんやり突っ立っているのは警戒心がなさすぎる。それに、ひったくり犯をひとりで追いかけようとするなんて論外だ。そのまま捕まって、どこかに連れ込まれる危険性だってあるんだぞ」

 その言葉に背筋がひやりと冷たくなる。
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