天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「俺が一緒に生きていきたいと思うのは、里帆だけだ」
「でも、私がこのままずっと自信を取り戻せなかったら……?」
「そうしたら、三十年後に俺がパイロットを退職してから君にプロポーズする。それなら断る理由はないだろ」

 笑いながらなんでもないことのように言うと、里帆は信じられないという表情を浮かべた。

「そのときに、私がひとりでいるとは限りませんよ」
「それでもいいよ。ほかの女と付き合うくらいなら、一生ひとりで君を想い続けたほうがいい」
「そんな、翔さんに人生を棒にふるような真似をさせられません!」
「俺が勝手に想い続けるだけなんだから、里帆が罪悪感を抱く必要はない」
「そんなこと言われて、そうですかってうなずけるわけないじゃないですか。本当に、言ってることがむちゃくちゃです」

 頬を膨らませて里帆がこちらを睨む。
 けれど眉は下がり目には涙が浮かんでいた。

「好きだよ、里帆」

 ささやきながら抱き寄せると、里帆は俺の胸に顔をうずめ「ごめんなさい」とつぶやいた。

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