天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 私が無線のスイッチを握ると、武地主幹に「そんなのいい!」と止められた。

「蒼井、一度深呼吸をしろ」

 主幹の指示通りに息を吐きだした途端、緊張の糸が切れ両手がガタガタと震えだす。
 指先がものすごく冷たくなっていた。

 自分がどれほど集中していたかを自覚して驚く。

「お前はやるべきことをやりとげた。だから、あとは俺たちに任せて行け」

 そう言われ、意味がわからず目を瞬かせる。

「行けって、どこに……」
「矢崎機長のところだよ」

 あきれたように主幹は言った。

「抱きしめに来てくれるのを待ってるんじゃなく、自分から塔を下りて抱き着いてこい。そして、お帰りって言ってやれ」

 その言葉に、鼻の奥がつんと痛くなって涙がこみ上げてきそうになる。

 みんな主幹に同意するように、笑顔で私にうなずいてくれた。

「……すみません、行ってきます」

 そう言って、ヘッドセットを外すと駆け出すようにして管制室を出る。

 エレベーターのボタンを押し乗り込んだ。
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