天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない～痺れるくらいに愛を刻んで～

「結婚するから仕事を辞めると言われるのかと思った」
「え。言いませんよ、そんなこと。私、この仕事が好きですから」

　そもそも翔さんとは付き合いはじめたばかりで、まだ結婚についてはなにも決まっていないのに。

　当然のように答えると、武地主幹がぱぁっと笑顔になる。

「いやぁ、そうか。よかったよかった。これからも頼りにしてるからな」

　満面の笑みで言い、私の肩を叩いた。

　いや、よかったじゃなくて。

「だから、翔さんに面談するなんて、いったいなにを考えてるんですか！」

　私が厳しい声で言うと、武地主幹が「やべ」とつぶやき慌てて神妙な表情を作る。
　こほんとせき払いをしてから私を見た。

「たしかに、蒼井に内緒で矢崎機長と話をしたのは、さすがにちょっとだけ過保護だったかもしれない」
「ちょっとだけじゃないですよ！　普通、上司が部下の恋愛事情に首を突っ込んで面談なんてしませんから」