天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 ぷんぷんと怒りながら頬を膨らませる富永さんに、「ごめんね」と慌てて謝る。

 武地主幹がそんな私を見ながら、「蒼井」と名前を呼んだ。

「航空管制は本当に大変な仕事だ。些細なミスが人命に直結するし、どんなトラブルも冷静に対処しなければならない」
「はい」

 真剣な表情で見つめられ、思わず背筋を伸ばしてうなずく。

「そんな管制官にかかるストレスは相当なものだ。正式に公表されているわけじゃないが、職業別の自殺率はトップレベルだなんて言われたりもする。わかるだろ?」

 その言葉が胸に深く刺さった。
 実際ストレスに耐え切れず、職を辞した仲間たちもたくさんいるから。

「だから、蒼井を守りたかった。過保護だとはわかっていたが、これ以上蒼井が傷ついたり自分を責めたりしないように、矢崎機長が本当に信頼できる男かどうか確かめたかったんだ」
「武地主幹……」

 それはこの仕事を辞める心配だけではなく、私の心身の心配もしてくれていたんだろう。
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