天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない～痺れるくらいに愛を刻んで～

　その信頼が嬉しくて、涙がこみ上げそうになる。

「ほら、そろそろ上がっていいぞ。矢崎機長が待ってるんだろ？」

　そうだ。翔さんは一昨日起こったエンジントラブルの原因を究明するための調査に立ち会っているはずだ。

　夕方には終わるだろうから一緒に帰ろうと、約束していたのを思い出す。

「すみません。じゃあ、お先に失礼します」
「はーい、蒼井さんまた明日」
「お疲れー」

　みんなから声をかけられながら、エレベーターで塔を下り外に出る。

　辺りはすっかり深い藍色に染まっていた。
　夕方から夜へと移り変わる美しい色合いの空に、ターミナルビルの明かりや滑走路の誘導灯が浮かび上がる。

　そして白い旅客機が、両翼の緑と赤のライトを点滅させながらゆっくりと降りてきた。
　小さかった機影が、近づくほど大きくなっていく。

　あの中にはたくさんの乗客が乗っていて、その飛行機を飛ばすために、たくさんの人が働いている。