天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~


『私のバッグを返して!』

 男に向かって英語で叫んだけれど、もちろん止まってはくれなかった。

 私が男を追いかけようと足を踏み出したとき、肩を掴まれ引き留められた。
 驚いて振り向くと、黒髪に黒い瞳の長身の男性がいた。

「ここで待ってろ」

 彼は艶のある低い声でそう言い残し走り出す。

 私は驚いて瞬きをする。
 風が吹き抜けたかと思った。

 長身の彼はあっという間にひったくり犯に追いつく。

 男の肩を掴むと、腕をひねりあげる。
 そして逃げられないように男の体を地面に押し付けた。

 相手は体格がよくケンカ慣れしていそうだったのに、彼はあっさりと犯人を捕まえてしまった。

 その身のこなしにただただ見とれ、「すごい……」とため息をもらす。

 彼の身体能力の高さに驚いたのか、周りにいた人たちからも拍手や歓声が上がった。
 彼をヒーローのようにたたえる。まるでお祭り騒ぎだ。


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