スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
新婚失恋
 この日の予定は大学病院へ行くことだった。
 私は日本に帰国してからというものの、家の自室でリハビリをしていた。
 身体をほぐすための柔軟は毎日行っているが、それだけではダメだと思ったからだ。
 ただ歩くことではなく、バレエに復帰するためにバーレッスン────つまり手すりを使ったバレエの練習に励んでいる。

 その中でトウシューズを履く機会もあるのだが、やはり履いた翌日には足を酷使してしまうせいか痛みを訴えることがあるのだ。

 そのことを啓一郎さんに相談したところ、痛みを和らげるための鎮痛剤を処方するから一度大学病院で診察を受けるべきとの話になり、今に至る。

 大きな病院で医者の数も多いせいか、啓一郎さんが主治医ではなかった。
 リハビリはリハビリの専門医がおり、本来ならば担当の引き継ぎが行われる。だが私の場合は日本人ということや啓一郎さんの口利きによってパリではそのままだったのだ。

 結局啓一郎さんとは会うことなく、そのまま自宅へと帰宅しようとしていた。だが、私は待合室に座るよく知る人物を見つけて声をかける。

「長谷川くん、こんにちは」

「あっ、センパイ……うっす」

 染めた茶髪に無愛想な顔。
 昔通っていたバレエスクールの後輩、長谷川くんだった。

「足湯施設以来だね」

「そっすね」

 そう言ってなぜか忙しなく目線を泳がせる長谷川くん。
 いつもと様子が異なる長谷川くんに私は疑問を覚えた。
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