スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「あのとき謝ったのは紗雪の好きだと言う気持ちを断ったわけじゃない。俺はすごく……生きてきた中でこれ以上ないほど幸せだったし嬉しかった」

「で、でもどうして……それなら……」

 緊張しているのか、悩むように眉を寄せていた啓一郎さんは「聞いてくれ」と言って自分のことを語り出した。

 私の舞台を見たときの気持ち、見る前の生き方、担当医になってから気持ちが溢れて止まらなかったこと、そして────妹さんとの過去。

 特に妹さんの件に関しては衝撃が大き過ぎで、これを啓一郎さんひとりでずっと抱え込んできたことにどうしようもない悲しみを覚えた。
 私がそのときそばにいれたなら、こんなに苦しむ前にどうにかして支えてあげられかもしれない。
 出来もしないことなのにもどかしくて仕方がなかった。

 気づけば涙を流していた。
 そのときの啓一郎さんの深い悲しみややりきれない後悔を考えると、溢れる涙を止めることはできなかった。

「泣かないで、紗雪。ありがとう、俺の分までいっぱい泣いてくれて」

 そう言って頭を撫でてくれた啓一郎さんはいつも通りの姿で。
 愛しさが溢れてきて、私はこの人のことが心底好きなんだなと改めて実感した。

 啓一郎さんの優しさは自身の悲しみを乗り越えた上にあるものだと思うと尊くて。
 私は気付けば抱きしめていた。
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