恋に落ちる音  【短編】
 抹茶ラテに口を付けて飲み始めた。
 松堂さんが、入れてくれたと思うといつもの何倍も美味しいような気がする。カップから手を離すと、さっき松堂さんがカップに書いていた文字が見えた。

 『一昨日は、ありがとう。会えてうれしいよ!』

 「うそ……。うれしい」
 カップにお礼が書いてあった。こんなのただの " 社交辞令 " と思いながらも心の中でふんわりと膨らんだ温かな気持ち。

 買ったばかりの本を読むことすら忘れて、松堂さんが書いたカップの文字を眺めていた。
 少し右上がりのクセのある文字までもが愛おしい。

 カウンターにちらりと視線を送り、松堂さんの姿を盗み見る。

 はー、尊い。幸せだぁ。

 まさか、昨日の今日で会えるなんて思わなかった。
 神様、ありがとう。
 時計を見ると午後4時過ぎ、窓の外の空はだんだんと夕暮れに近付いていた。
 今から急いで行けば、神社にお礼のお参りができる。松堂さんをずっと眺めていたいけどアブナイヤツって思われるのも嫌だし、神社に行こう。
 そう思い。立ち上がった。

 あ、もちろん松堂さんのメッセージ入りのカップは持って帰る!!

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