いらない物語(続・最初のものがたり)
1
きらめくイルミネーションと
浮き足だった人々の流れを、
なんとなく見ていた。

いつもの仲間と、
ダンス終わりのクールダウン。

地元のショッピングモールでさえ、
こんなに華やいでいるんだから、
12月ってすごいなぁ。

そういえば、いつもの観覧車も、
冬バージョンは幻想的だ。

なんでイルミネーションって、
冬だけなんだろう。

「1年中、キラキラしてたらいいのに。」

そう言う私に

「うーん。
夏は陽が沈むのが遅いからか?
19時でも明るいもんな。
それに照明で余計暑苦しいだろ」

トモの意見は、なんかヤダ。

トモは同じ高校に通うダンス仲間だ。

歳だって同じなのに、
なんかいつも冷静で上から目線なんだよな。

でも、冷めてるように見えて、
実はダンスには人一倍熱い男。

彼女にも熱い男だった!

彼女のアヤノもまた
私のダンス仲間で幼なじみだ。

アヤノといる時は、
デレデレだったりするのかなぁ。

まぁ、どうでもいいか。

そんなバカバカしい事を考えながら
時間を潰し、勇磨を待った。

遅いなぁ、勇磨。
またファンクラブに囲まれてるのかなぁ。

同じクラスで隣の席の勇磨。

初めはそのコミュ力の無さと
感じ悪さとで苦手なタイプだった。

ケンカも何回もした。

でも色々あって、
今は勇磨のいない世界なんて考えられない。

私にとっては大切だ。

勇磨も私を好きだって言ってくれた。

でも、勇磨、モテるから。
アイドルみたいに、いつも注目されるから、
私のヤキモキが止まらない。

いつか誰かに取られちゃうんじゃないかって。

そんな事、考えても仕方ないのにな。

なんか最近、特に怖い。

「お待たせ」

その声に弾かれ現実に戻った。

白い息を吐きながら、笑う勇磨。

いつもは前髪が眉を隠してるのに、
今日は乱れておでこが見える。

茶色いサラサラな髪と、
同じ色の瞳はくっきり二重で、
まつ毛なんて私より長いんじゃない?

猫みたい。

ヤバ。

久しぶりに会うから、余計に素敵度が増す!

勇磨達、バスケ部は大会続きで、
しかも勝ち抜いてるらしく、1週間公欠した。

3年生も引退した今、
1年生の勇磨もかなりの戦力らしく、
練習にも熱が入っているのが伝わる。

頑張ってほしい、本当に応援してる。

来週からは期末テストが始まる。
それが終われば冬休み。
また勇磨に会えない。

でも、やっと会えた。

なんかドキドキする。

息を切らして空を仰ぐ勇磨、
走って来てくれたんだ。

本物だ、夢じゃない。

ずっと会いたかったよ。
でも我慢してた。

なのに。

勇磨が眉を寄せて私の全身を見渡す。

「ナナ、スゲェ服。俺、その服、キライ」

うん?服?

何?いきなり?

途端にピンクの空気が消え失せる。

ムカツクんですけど!

だけど、前も言ってたな。
ダンスの服、派手でイヤって。

まぁ、確かに派手だよね。
特に私はカタチから入りたいから、
奇抜なデザインとか、カラフルなのが好き。

だけどさぁ、これって私の自由じゃん!

なんだよ、久々に会えたのに!
そんな事、言わなくてもいいじゃん!

「別に勇磨の為に着てるんじゃないし。
自分が好きで動きやすいし、
気持ちが上がるから着てるの!」

私の反論にあからさまにムッとする。

「コートは?」



ああ、コートね。

横に置いておいたコートを羽織った。

羽織って気がつく。
クールダウンしすぎた、寒いっ。

私のコートの襟を持って、
しっかりと前を閉めて着せ直す。

ダンスチームの仲間に冷やかされ
恥ずかしさが増す。

もう、こどもじゃないんたからっ。
やめてよ。

まだムッとしたままの勇磨が
上目遣いで睨む。

「なぁ、露出しすぎじゃねぇか。
肩とか落ちてるし、
かがむとこの辺が見える。」

自分の胸元をたたく。

慌てて私も胸元を押さえたけど。

え、でも待って!

「下にタンクトップ着てるんですけど!
中、見えないし。
下に着てるんだから、
肩が見えてもいいじゃん!」

その言葉に更に炎上する。

「お前、本気で言ってんの?
俺、何回も言ってるよな。
女は簡単に見せるな」

はあ?

目の前でイライラして怒る勇磨に
納得いかない。

「見せてないし」

見えちゃうのと見せるのは意味が違う!

「そういう問題じゃないの!
他の奴に想像されるのも、
変な目で見られるのも、
俺がイヤだって言ってるの!」

自分の頭をかきむしる勇磨。

うー。まただ。

うるさい。

めんどう。

だけど。

勇磨はいつも、こうだ。
私を心配して、私を大切にしてくれる。
俺以外はダメって色々と約束をさせられる。

親以外に心配される事に慣れない私は、
ちょっとうるさくも感じるけど、

でも、結局、嬉しいんだ。

不本意だけど、納得いかないけど、

嬉しいって思う。

「分かった」

それだけいう私に満足して、
手を繋いでくれた。

「よし、分かればいい。じゃあ帰るか」

横を歩く勇磨を見上げた。

会いたかったな、ずっと。
やっと会えた。
< 1 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop