こんなにも愛しているのに〜私はましろ

もう嫌だ

美郷ちゃんの部屋から帰宅すると、
鍵を開ける音に反応したかのように陸が玄関まで
やって来た。

「あれっきり、連絡がないし、夜勤が終わったはずなのに帰って来ないし、心配したよ。
急患でもでたの?」

「嫌な嫌な夜勤の厄祓いに行って来た。」

「あの電話は何?」

そうよね。
意地悪くあの新人ナースに携帯を渡したっきり、一言も喋らなかったのだから
陸はなんのことかわからなかったでしょうよ。
おまけにぐっすりと眠っているところを起こされたのだから。

「コーヒーを飲む?」

「あぁ、、、、いや、俺が淹れるよ。
お風呂にでも入ってくれば?お湯を溜めているよ。」

「そう。。。ありがとう。」

夜勤明けには必ず、帰宅したらすぐにお風呂に入れるよう、準備を
お互いにお互いのためにしていた。

私は、これから陸と話をするために、頭の中を整理しつつ、ゆっくりと
お湯を使った。

髪の毛を乾かして、リビングに行くとすかさず、陸がポットに入れておいた
コーヒーをマグカップに注いで持って来てくれた。

「これから、寝るんだったら睡眠の妨げにならないか。」

「ミルクをたっぷりと淹れるから、大丈夫。」

「ちょっと睡眠が取れたら、母さんと待ち合わせだ。」

「待ち合わせ?」

「言ってただろう。今日は、俺の結婚式の衣装合わせ。」

「あぁ、、、、」

初期研修が終わったら、式を挙げると決めていた。
早々に、私のウェディングドレスは、母と二人で決めており、
陸のモーニングやタキシードは、西崎のお義母さんと決めてと言っていたのに
ましろも絶対に一緒に行こうと、陸が強く望んだのだった。

「あぁ、って、忘れていた?
なんだか、乗り気じゃないよね。

結婚して2年も経っての式じゃ、新鮮味が薄れるのかなぁ。
俺は、やる気満々だけど。。。」

その陸の能天気さに、私は苛立った。

「式、、、挙げたくない。。。」

「なんで?今更って?」

陸が少し焦り出す。

「結婚して2年。本当に忙しくって、まともに結婚生活を過ごしたわけでは
ないけど、この頃陸の考えていることがわからなくって、、、」

「昨日の話?達と曽根田さんのことから始まった話?
電話で言っていた、病院での噂?」

「きっとね、以前からあったことだと思うの。私が、気がつかなっただけで。

陸もなんのやましいこともないって、言っていたし、、、」

「ないよ。
一つもないよ。

俺はましろとの結婚に、なんの不満も疑問もないよ。」

私は思わずため息が出た。。。

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