こんなにも愛しているのに〜私はましろ

ここに帰りたい

結婚生活2年目で、夫婦の重大事件を経験した私たちは
後期研修に入る前、ちょっと一息つける時に、お預けになっていた結婚式と
披露宴を行った。

西崎病院の跡取りの披露宴ということで、周りのみんなは期待していたが
私たち二人の思いを通させてもらって、
身内と、本当に大切な人たちとに囲まれたささやかな式にすることになった。

陸は結婚式場となった教会で、ヴァージンロードを父と歩く私を
待っている間に、もう号泣に近い泣き方をしていた。
式を司る牧師さんの言葉にも泣きながら答える始末で、後々、それを大いに揶揄われて
一人憮然としていた。

’本当に式を挙げられた。本当にましろが歩いて来ていると思ったら
ぐわ〜っと込み上げて来て、、、、’


私には教えてくれた。

ヴァージンロードを父と歩く私。
父は一緒に歩く資格はないと言った。
私もそんな父を説得する言葉もなく、結局のところ母から父が一喝されて
一緒に歩くことになった。
父は、号泣する陸を見て涙が引っ込んだと言っていたが、
泣いていた。。。

理恵おばさんはそんな私たち父娘を、’本当に不器用ね。そっくり。’と笑っていた。
それよりも
理恵おばさんの隣に、いつの間にか国松先生がいらっしゃるのを見て
私も陸も驚いてしまった。

何やら縁があって、国松先生が押しに押して、理恵おばさんを嫁にすることに
なったと嬉しそうにおっしゃっていた。
また、と言っては失礼だが、国松先生の方が年下だ。
理恵おばさんは隣で、赤くなっている。その姿が可愛かった。

近いうちに
秘密でここまできた二人の話をじっくりと聞こう。
母も、結婚すると言われて初めて知ったらしい。

母方の祖父母、、、祖母の姿が見えない。
昨年、急な病で亡くなった。どうしようもないことだったが、近くにいて
祖母を支えたかった。
母も力落とし、落ち込み、父が随分と心配をして支えていた。

母が、一人になった祖父を思い、一緒に暮らそうと提案したが、
祖父は祖母と二人の想いが詰まったここで暮らすと言って、一人暮らしを選んだ。

父方の祖父母は、祖母が入院骨折から、いろいろと身体の不具合が生じ
今では、一人で身の回りのこともできず、認知症も発症して、
私たちのことも、祖父のことも認識できなくなってしまった。
祖母は専門の施設で手厚い介護を受けている。
祖父は、別の老人専門のマンションで暮らしながら、祖母を見舞い、
自分の趣味の釣りを楽しむという生活をしていた。

私と陸は時々、この祖父を見舞いながら、一緒に釣りを楽しんだりしている。

陸の家族、初めてお会いするが、陸のお兄さん海都さんと式でお会いした。
お義父様とは犬猿の仲らしいが、露骨に嫌な顔をなさるお義父様に対して
海都さんはどこ吹く風と、平然とされていた。
事実婚のパートーナーの律さんを連れていらしたが、この方が途方もない美人で
手塚くんは’さすが海都さん’と、妙な感心していた。

ちょっと律さんと話せたが、本当にとても良い方のようで、天は二物も三物も
与えるのだなと、私は思った。

お義母様もお義父様も、律さんと初対面でいらしたそうだが、とても
気に入ったご様子で、微笑ましかった。

陸大好きな手塚くんは、式の間中泣いていた。
陸ほどの号泣ではなかったが、よかったよかったと何度も頷くようにして
泣いていた。
それぐらい喜んでくれるのだったら、陸を変な遊びに誘わないで欲しいと
思った。

手塚くんが大好きな美郷ちゃん。
小学校以来、本当に久しぶりに母に会い、弟たちのことを話してはいたが、
実際に、傍のやんちゃな双子を見て、驚いていた。

’うちのお母さんと同じ美魔女だわ。
うちの母は男を惑わす美魔女で、ましろちゃんのお母さんは慈愛溢れる
聖女のような美魔女、、、’

確かに母性溢れる人ではあるけど。

私と陸が歳を重ね、ここで式を挙げる。
周りのみんなも、それぞれの歳の重ね方をして来たようだ。



これからも
もしかしたら一筋縄ではいかない人生かもしれないけど
幸せになろう。



二人で幸せになろう。



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