こんなにも愛しているのに〜私はましろ
「・・・ろ、・しろ・・」

「ん、、、、」

どこからか自分を呼ぶ声がする。

はっとして、しっかりと覚醒した。

「気持ちよく寝ているけど、お腹減ったからハンバーグを
仕上げて。」

「ん〜、、、は〜い、、、」

いつの間にか寝てしまっていたらしい。

居心地いいものね。
父のことで家出していた時に、あまりの居心地の良さと父と一緒に
いたくないこともあって、
一生このままここで暮らそうかと真剣に思っていたっけ。

あのときは迅くんがまさか
理恵おばさんの恋人なんて、思いもしなかったから。

「迅くん、私が話があるって言ったから、わざわざお友達と
外食してくれた?」

「そうだろうね。
自分がいたら話しにくいだろうなって、わかっているんじゃない。
茉里が一緒じゃない、というところで、これは深刻な話かもって。」

こんな時に、そうじゃないよ、とか、気にしないの、とか
気休めみたいな返事をしないのが理恵おばさんだ。

「ごはんを食べながらでよかったら、話をして。今日はお昼も抜きだったから
お腹が減っちゃって、、、」

私はそのまま食べながらでいいから、聞いてと言って、まず
昨日下校中に起きた出来事から、今日の先ほどまでの出来事までを
簡潔に話した。

その中で、絡まれた子たちから無理やり行かされた駅までの道の途中で
父の見たくもない姿を見ることになったことも、言った。

「それで本当のところの原因が、わからないまま絡まれて、
今日、その謝罪を受けて、、、
手塚くんという男子が、彼女たちからの連絡を無視したというのが
あの待ち伏せだったんだけど。。。」

「はぁ、、、どうしてそうなるかな。。。短慮というか、、、
ただ、高校生の痴話喧嘩とか言って疎かにしていると、ちょっと
怖いのが今どきの子達だから、ましろは充分に自分の身の回りに
気をつけなさい。

何かの時のために GPSを機能させる方が、得策だと思う。
明日、迅くんに言って、アプリを入れてもらおう。
大袈裟ではなく、それがいいよ。」

私も尋常ではない様子の彼女たちに絡まれて、そう思った。

「茉里には私から必要以上の心配をしないように言っておく。」

「お願いします。心配するだろうけど。。。」

「GPSつけられたら、ましろが簡単に家出できなくなるけど。」

「家出するときは、携帯を捨てるから大丈夫。」

「それは大丈夫とは言わないなぁ。」

それから
理恵おばさんはおいしいね、と何度も言いながら特大ハンバーグを
2個も平らげて、迅くんのために残していたものにまで箸をつけようと
したので、それをなんとか押しとどめた。

「で、、、本題は?」

私が淹れた食後のお茶を、美味しそうに飲みながら尋ねる。

こういうところが鋭い。
今までの話が、私の前振りだと、気づいていた。
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