こんなにも愛しているのに〜私はましろ

違和感と日常 2

私は、母と暮らしていくうちに、波風立てずに生活をする術を身につけ
今、穏やかに暮らしている。

母は相変わらず、自分から父に連絡はしていないようだが、父からの連絡は
待っているようだ。
待っていなくても頻繁にやって来ている。
ポケットに必ず、スマホを携帯させて、そこからピコンピコン
父からのメッセージ着信が聞こえてくる。

もう
父からの連絡をそんなに心待ちにしているのなら
シンガポールへ行っちゃえばいいのに。

許しているわけではないが
それぞれの事情がある。ということは
理解していて、両親の事情があるのだろう。

私を言い訳にはしないでほしい。

それだけ。

理恵おばさんと定期的に女子会をする。
母も私が理恵おばさんと話すことで、心のバランスをとっていることが
わかっているので、
「今日は二人。」
っていうと、
「楽しんでいらっしゃい。」
と言う。

少し寂しげに言うことはわかっている。

気づかないふりをして、行って来ますと言う。

一度
いつものようにオフィスに自宅の鍵を取りに行ったら
偶然、国松先生と遭遇した。
先生が一瞬気まずい顔をされたので、私も後ろめたい気持ちになってしまい
すぐに近くの応接室に滑り込んで、先生(とどなたか)が立ち去る足音を
聞いて部屋から出た。

後で理恵おばさんにそのことを話して、
今更かもしれないけど、合鍵をもらうことになった。
守秘義務がある弁護士オフィスで、知り合いとこのように偶然に会うということが
これからもないとは限らないから。

「クライアントのことは何も話さないけど、国松先生っていい先生だね。」

理恵おばさんはそう言った。
先生、何か面倒なことに巻き込まれていないといいけど。
手塚くんの時みたいに。

「あの高校1年の時の事件を収めてくれた先生だよ。担任の先生でもあってね
本当にいい先生で、私が好きな先生。」

そういえばあの事件のことを理恵おばさんに話したら
先生と一緒で、大人に頼りなさいって、言っていた。

「いくら相手の子たちが高校生でも、やっていることは犯罪だからね。
たちが悪いよ。
ましろもすぐに言いなさいよ。」

国松先生、大丈夫だろうか。
理恵おばさんに尋ねたかったが、絶対に一言も漏らさないだろう。。。
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